それにしても、歴史の本を紹介するのは想像以上にタフな仕事であることもわかってきた。
で、昨年に邦訳の出た本の話になるのだが、これらには共通点があって原著が結構古いのだ。その辺りの事情などを踏まえつつ、紹介しておこう。
まずは、その名もシンプルに『世界史』(楽工社)で、ウィリアム・マクニールと、ジョン・マクニール父子による著作だ。原著の出版は2003年なので86歳と49歳の親子の共作ということになる。
ウィリアムは「世界史」(中公文庫)が広く読まれているが、この本の原題は”The Human Web”で、つまり「人と人をつなぐシュシュの結びつき=ウェブ」という視点で世界史を読み解こうというものだ。副題の「人類の結びつきと相互作用の歴史」が表すとおりである。
この発想はシンプルだが、頼りになる手がかりで、理解はスムーズにすすむ。ただ、近年の世界史本を読んだ後だと、既視感があることもたしかだ。もっと、早く訳が出ていたら日本でも話題になったかもしれない。
また、シカゴ大学のポメランツによる『大分岐』(名古屋大学出版会)は2000年の出版だから、15年後の邦訳ということになる。副題に「中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成」とあるが、19世紀後半からの西欧の経済発展はどこから「分岐」が始まったのかという問題意識である。
昨日に紹介した『人類5万年 文明の興亡』を連想するが、こちらは2010年に書かれており(邦訳は2014年)、ポメランツへの言及もたびたびおこなわれている。
ただし、この『大分岐』は相当に手ごわい。本論は300頁あまりだが、補論が40頁ほど加わり、注釈と参考文献で100ページ近くある。 >> いま世界史の本がおもしろい③の続きを読む