小説のコミック化はいろいろとあるが、池波正太郎は結構多いのではないだろうか。
さいとう・たかをの作画によるコミックは見たことがある人も多いだろう。
昔ながらの中華料理屋で、漫画アクションなどと一緒に油がまみれているソフトカバーのイメージだろうか。あと、コンビニなどでも思いだしたように「傑作選」のようなものが売られている。
池波正太郎の作品は相当読んだが、コミックを買ったことはなかった。鬼平犯科帳もやはり、さいとうプロの作品なので、“あの人”のイメージが強い。ページをめくった途端に、悪党の眉間が撃ち抜かれているような気がして、どうも馴染めない。
そもそも、さいとうたかをの作画は西洋人を描くのに向いている気もする。人間の体が三次元で捉えられていて、どこかガッチリして、ミッチリとしている。
剣客商売もさいとうプロがコミック化しているが、そんな理由もあって何となく敬遠していた。ところが一昨月に訪れた奈良田の宿の本棚にあった「剣客商売」のコミックがなかなかいい。
作画は大島やすいちだが、画風は穏やかで違和感がない。というよりも、スッと世界に入っていける。調べてみると、さいとう・たかをは1998年から翌年にかけての連載で新刊5巻。大島やすいちは2008年からの連載で23巻まで出ている。どちらもリイド社だ。
この大島版は、困ったことにkindleでも読める。何が困るって、するする読めるのでズイズイとダウンロードして止まらない。じゃあ読めばいいのだろうけど、少しずつ読みたいので悩ましい。しかも、コミックで読み直していると、小説を再読したくなる。 >> 【本の話】江戸の空気感が漂う、コミック版「剣客商売」。の続きを読む