テレビCMが若年層特に十代に対して相当届いていない。このことは横山隆治氏の「新世代デジタルマーケティング」でも言及されていたし、こちらのブログにも書かれていた。
さて、そうなって来ると結構想像もしていなかったことが起きるかもしれない。
それは、有名だと思われていたブランドでも、そもそも「知られてない」という事態だ。
そもそも、「ブランドを知る」というプロセスってどうだったのだろう。子どもの頃から振り返ってほしい。
多くの人は「店で見た」というかもしれない。でも、本当にそうだろうか?飲料や菓子などは、そういうことも多いだろう。では、エレクトロニクスはどうだろう?電器店まで行くようになるのは、それなりの年齢になってからではないか。クルマはどうか?親と一緒にディーラーに行くことはそんなにはないだろうから、「家にある」か「街を走る」クルマを見て認知したのだろうか。
というように考えていくと、想像以上にTVCMによって認知が促進されていたのではないか?という可能性に思い至る。こればかりは検証しようもないので「自分は違う」と言われればそれまでだ。ただし、今のようにテレビ接触が減っていくと、「そもそもブランド知りません」とか、知っていてもイメージは追いつかないということになるかもしれない。
というのも、認知を得るための売り場自体が変わっていく。中高生がコンビニに行っても、ナショナルブランドに接する機会は減っている。ドラッグストアでもそうだ。特に十代向けの商品は乱立状態になっている。
そしてTVを見ないとなると、森永や日清や花王やP&Gという「誰もが知っているブランド」という前提は結構怪しくなるかもしれない。
ではネットが代替できるのか?ブラウザーから個別のアプリが中心となっていく中で、TVCMのような到達は期待できるのか?都市部なら交通広告の方がいいのか?となっていくと、それはそれで陣取り合戦は大変になるだろう。
2015年の「CM好感度」では、auの三太郎が1位でソフトバンクの9連覇を阻止という記事があった。このベスト10にはドコモも入っている。ただし携帯電話のCMはまったく前提が異なる。あれだけ街にショップがあり、小学生の頃からブランド選択をすることになる。三社とも知名度は100%に近い。だからクリエイティブは結構自由でもいいのだ。
ただし好感度が高いから、と手法を真似てもどうにもならない。これからのマーケティングは、特に若年層に向けて「ブランド認知を高める」という基本をおさえるための方策を探し直すことが求められるからだ。
そうなると、自販機を持つ飲料メーカーなどは、あらためてその効果を見直すかもしれない。「CMが見られない」という前提になると、食品やトイレタリーに比べて、「看板としての自販機」は効いてくるだろう。
体験型のミュージアムやキッザニアなどへのスポンサードや、命名権ビジネスなどへの投資も認知度維持の観点から重要になる。マーケティングの手法がいろいろ取沙汰される中で「知名」というビジネスの基幹が問われているように思う。