平日の午後、天気もよく時間もあったので上野の動物園に行った。芸大の卒展を見て、谷中の方へと歩いていく。外国人も含めて人が多く、かつてはガラガラだった古い喫茶店にも外で客待ちの列がある。
一休みして本でも読もうと思ったのだが、どうもしっくり来る店がない。古民家を改造していて、オーガニックや何やら書いてあったり、畳の席だったりする。マーケティングしいてるのはわかるのだが、そういう店じゃなくていいのだ。
とりあえず入った店は、近所の人のたまり場になっていた。芸大の学生を囲んで、いろんな人が話しているのだが、居酒屋のように喧しくてロクに本も読めない。喉も乾いたので生ビールを頼んだのが、サーバーをまともに洗っていなのか酷い味がした。
早々に退散して千駄木の方に歩いて行ったのだが、とにかく居心地がわるい。なんでだろうと思ったら、すぐに理由がわかった。前にも書いた「ていねいな暮らし」とか好きそうな人が好む、あの独特な雰囲気があるのだ。
コーヒーと和風の甘味を出す店が目立ち、「昔ながらのナポリタン」とかあり、手染めの製品を売っていて、敢えて言えば「ていねいな暮らしのテーマパーク」なのだろう。
ふと連想したのは、70年代後半の清里だ。なぜかいきなり「カワイイ」文化が流入して「高原の原宿」と言われた。今は落ち着いたようだが、いったいあのブームは何だったのだろう。とりあえずキノコの入ったパスタは「森の小人たちのスパゲティ」になり、シーフードグラタンは「海の妖精のグラタン」になってしまった。
いまの谷根千は、あの空気に近い。こういう作られた町からは、早々に退散したい。僕にとっては、歩いているだけでむず痒くなる道だ。 >> 意識の高い作られた下町、谷根千。の続きを読む