M-1グランプリでNON STYLEが「ユニクロだけに書き下ろした新作漫才ネタ」をやったのが話題になっている。
これはユニクロのサイトにあった言い回しなんだけど、実際は「ユニクロのための広告を漫才スタイルで制作した」というのが正しいと思う。つまり、明らかな広告なのだ。
これ、オンエアでは見なかったのだがその後、いろいろと話題になっている。評判もいいようで、これを「ネイティブアド」と評した記事もあった。
まあ、そうかもしれないけど、これはまさに「生コマCM」だと思う。
すでに「生コマって何?」と思う人もいるかもしれないが、朝のワイドショーなどでスタジオで商品説明をしながら、実演するタイプのCMである。花王やライオンなどは今も続けている。
この生コマは、結構テレビ草創期からあった。そもそも、その頃のテレビは生放送が中心で一社提供が多かったので、それも自然だったのだ。
その後、生コマは減少していき、広告制作の世界でもある種の職人芸の世界になった。生コマCMのクリエイターは、なかなか評価されにくいこともあり、若手が「やってみたい」というのはまず聞かない。
今回はすべてが生ではなく、ウェブ限定のコンテンツもあるようだが、発想は「生コマ」と言っていいだろう。そして、漫才で作ったところがちょっとすごい。番組との境界線がないので、そりゃ見てしまうだろう。
それで思ったんだけど、この手法はいろいろと効果が云々されるTVCMの意外な突破口になるかもしれない。ま、思いつきだけど
・サッカーのハーフタイムに、解説者がスポーツグッズなどについて語る
・音楽番組で歌手がスポンサーをからめた広告ソングを歌う
・クイズ番組でスポンサーがらみのネタを、クイズ形式で披露する
もちろん、これはそれなりにハードルがあって、今回もスポンサー・タレント・局のそれぞれの調整が大変で、代理店も苦労したと思う。
タレント契約や報酬などをどうするんだとか、労力を考えると「ああ、やっぱ自分だったらやりたくないし、CM流している方が楽だよな」とか思うんだけど、とはいえ15秒を何回か流すだけのCMはこれ以上の効果を上げるんだろうか?やってみる価値はあると思うんだけど。
あと、意外な効果として、この漫才広告を見てるとユニクロが「お大尽」に見えてくる。「よし、うちらのカネでおもろいことやって笑わせてみ」という大物感。つまり、堂々と「広告だよ」ということで、むしろ効果を高めているんじゃないだろうか。
「広告だと効きません」という流れの中でのステマ騒ぎをなど見ていると、「これは広告」というクレジットに堂々とした雰囲気を感じてしまう。やっぱ広告おもしろいじゃない、って久々に思ったけどね。