2015年10月アーカイブ
(2015年10月1日)

カテゴリ:広告など

なんか、パンテーンのCMでは、綾瀬はるかは16歳を懐かしんでいる。一般人のこの頃の写真がテレビに出るというのは、相当の事件の当事者になった時のことじゃないだろうか。しかも、30歳くらいの犯人の写真がいきなり高校生のアルバムだったりして、もうそこには哀愁しかない。

でも、この頃の写真までがどこか輝いていて、もう「勝ち組」ってこういうことなのかと感じてみたりする。

CMのコンセプトは単純で、「あの頃のバージンヘアの輝きへ」とストレートだ。

で、ふと似たようなトーンのCMを見た。クラシエのディアボーテの「ひまわり」というブランドだ。こちらは尾野真千子。

「私がまだおさげだった頃、髪はとても素直だった」というナレーションの後に、過去の“私”が「大人になったら素直じゃなくなるの?」と問う。

こちらは年齢をハッキリ言ってないけど、「おさげ髪」なら、やはり十代をイメージしているのだろう。

にしても、なんで、いきなりシャンプーのCMが申し合わせたように十代を懐かしんでいるんだろう?

カテゴリーは違うけれど、花王のビオレ「うるおいクレンジングリキッド」も過去を振り返っている。「メイク落とし。あの頃はオイルでがっちり落とすのが好きだった」というナレーションに重ねて、「20才」「21才」「22才」とそれぞれの歳の写真が映る。で、「いまはリキッドで」という流れだ。

そういえば、一年前には化粧品のCMに「マイナス5歳」が溢れている、というエントリーを書いている。

で、このように「かぶっちゃう」理由なんだけれど、リサーチが精緻になった結果、「たどり着いたインサイトが同じ」ではないかと推測している。インサイト(insight=洞察)という言葉は、マーケティングの現場では「普段は気づいてない消費者の本音」のような意味でつかわれる。ターゲットの年代は30歳前後のようなので、「今の自分の髪に思うことは?」「理想はどんな髪?」と尋ねる時に、花王のエッセンシャルのような「指通り」のような実感切り口というインサイトと、別のものを発見しようとしたら、同じところにたどり着いたんじゃないだろうか。

もう一つ、これも推測だけどリサーチや制作のスタッフが女性中心になってきているんだと思う。広告制作は長く男性中心の世界で、化粧品やファイントイレタリーの世界でも「男からみた美しさ」を描いてきた。ファッションでも似たようなところがある。
いまのCMにそういう男視線は本当に減ってきている。

ターゲットにとってのリアリティへの接近という意味では、現在のCMの方がより優れていると思うし効果も高いかもしれない。ただ、練れば練るほどアウトプットが類似することもあるということなんだろう。

ところで、男性向けシャンプーで目立つのは田辺誠一のルシードだ。こちらも年齢訴求だが、ずばり「40才からのニオイ」と、もう切羽詰ってるよ。ううむ、男にはもはや過去を懐かしむ余裕もそうそうないということなのかいな。