8月の終戦の日が近づくと、テレビがやたらと戦争関連番組を流す。NHKのように、時間をかけて追い続けているような局はともかく、ついさっきまでから騒ぎをしていた民放の番組予告とか見ると、妙な押しつけがましさが先に立つ。慣れないスーツを慌てて着たら、ネクタイが曲がって滑稽になったような感じにしか見えない。
今年は戦後70年ということもあって、出版関係も早々と祭り状態だ。戦争という悲惨な歴史を販促にすることに、ためらうようなゆとりなどないんだろう。
何かのきっかけで、いろいろと本を読むことはいいと思うんだけど、ずっと問題意識を持ち続けられるか、という人は少ない。いまの安全保障の議論を見ていても、「にわか平和主義者」や、「即席愛国者」の言ってることは、相当に浅い。
いっぽうで、たとえば今の中学生に「戦争についての本」を選んで薦めるとなると、相当難しい。戦争は多面的だ。勝者がいて、敗者がいる。何年経っても、それぞれの思いがあって、論理がある。
だとすれば、その多面性をそのまま本にしたらどうなるか?というのがこの山田風太郎の著書だ。
開戦の昭和16年12月8日、終戦の年の8月1日から15日までの、さまざまな記録を編纂した本である。国内の記録もあれば、英米の回顧録もある。真珠湾攻撃の際の高揚が、高村光太郎、獅子文六、そして太宰治の言葉でつづられる。
そして、最後の15日は禍根の15日でもある。外交交渉と、組織内の意思決定が複雑に絡み合うが、二つの原子爆弾投下は防げなかったか?と改めて感じるし、一歩間違えば、「終戦」すらなかったのかもしれないと思う。 >> 【夏の本祭り】戦争の多面性を知るために、終戦の日に『同日同刻』。の続きを読む