話をややこしくする人は、会社にはたくさんいるが、結構困るのが「オレは聞いてない」という人である。まあ、広告会社だとこんな感じだ。
「この間、オマエの部でサツキ製菓の競合プレゼン獲ったじゃん」
「おお、おかげさまで。やっぱ旬のタレント持っていくと強いね」
「で、ウチの部長がご機嫌斜めでさ…」
「なんで?」
「あのタレント、オークス電機でも起用しているわけよ」
「あ、そうかオマエの部の扱いだよな、たしか」
「そうそう。でさ~昨日タレント・プロダクションの社長に『このたびはおめでとうございます』とか、言われちゃって」
「ああ、まあ言うかもね」
「で、ご機嫌斜めなのよ」
「なんで?」
「ま、つまり『オレは聞いてない!』ってこと」
「でもさ、決定したの一昨日だし、事前には言えるわけないし」
「わかってるけど、まあ、先に言われちゃったときに『知らなかった』というのが、まずいわけで」
「どうすりゃ、いいのよ」
「ま、なんか適当に口実つくって、ほら『撮影スケジュールとかでご迷惑かけることもあるかもしれないんで、よろしく』とか」
「なんか、もう面倒くさいな~。」
という感じである。ま、どの会社でも必ずあるのだ。
「あれ、今日は新人のアリマ君、どうした?」
「なんだか、役員がメシ連れてくとかで、トレーナーも一緒にさっき出ました」
「え?役員と行くの?オレ、聞いてないよ。なんだよ、それ~」
(ま、別に役員が課長にメシの事前相談はしないよな~)
この『オレ、聞いてないよ』というややこしい人は、共通点がある。それは「権限が半端」ということだ。つまり中間管理職に多い。自分で仕事しているようで、実は部下がやっている。自分で決めているようで、決定権はもっと上の役員だったりする。
こういう人たちにとって、大事なのは「情報」だけだ。空気を読みながら、先回りして立ち回ることばかりが大切なので、「知らない」ことは不安になるのだ。
もっとひどいと、こんな人もいる。
「え?なに?座れるかと思ったのに、始発じゃないの?上野東京ライン?オレ、聞いてないよ!」
ひとつ言えることは、この手の人が多い会社はダメなんじゃないかということだ。つまり「半端な人」が多いことの象徴だからである。