テレビ朝日の視聴率は「伸びた」のではない?【講義覚え書き】
(2014年10月28日)

カテゴリ:メディアとか

というわけで、今日は電波メディtv04-13ア、特にテレビの現況と課題について経営的な視点から見てきました。

売上に差があっても制作費の削減には限界があるので、局ごとに営業利益はバラツキが相当あるし、きーきょくでも単独決算では赤字の年があったりするわけです。一方で、世帯視聴率の動向を見ると、テレビ朝日(EX)が相当上位争いをしているというのは、知っている人も多かったようだね。NTVと相当競ってます。

2014年度で見ると、プライムは0.1ポイントで1位。全体的には「二強」になりつつある感じです。

じゃあテレ朝は凄く伸びてるのか?というと実はそういうわけではない。2004年の年間視聴率と2014年を比べれば一目瞭然。これはゴールデンの比較だけど、テレビの視聴率自体がギュッと縮こまってる。その中で、テレ朝だけが維持してるということなんです。でも実は0.1ポイント低下してるんですね。他の時間帯でも同様の傾向。

つまり、テレ朝は「伸びた」のではない。現状を維持することに成功し、結果としてシェアを高めた。そのくらいテレビの全体ボリュームは変化したんです。テレビ東京(TX)はたしか相対シェアは上がったけど、絶対値は低下です。

2004年との比較でどんな環境変化があったか。ネットはもちろんだし、金融危機もあった。一方で、団塊世代が退職しました。夕方以降の在宅率は上がったから、ここにシフトした編成を進めたことは大きいでしょう。

だから、恋愛ドラマが得意だったフジは厳しい。看板の月9が信長になったけど、10月スタートはクリスマスに向けて盛り上げるのが常套だったわけで、もうそうはいかない感じですよね。

テレビ朝日のドラマ一覧を見れば、狙いは明快。相棒をはじめとして、とにかく警察と医者ばかり。テレビドラマの素材は「困った時の専門職」といって、医者や法曹、もちろん警察というのは定番だけど、国税査察官や科捜研まで動員してるでしょ。

つまり、これは中高年にとっては一番いいヒマつぶしの娯楽なんです。一話完結なら、たまに見てもすぐわかるし。

もちろんドラマ以外にもスポーツの開拓や、バラエティなども健闘した。そうして、とにかくこの10年で「顧客を減らさない戦略」に徹してきたことがテレ朝の好調の主因だけど、一方でテレビ業界全般としては厳しいことは明らか。

ちなみに、視聴率の合計は約85%になってます。テレビ広告費が約2兆から1兆7000億くらいに減少しているので、15%減というのはちょうど合っているわけですね。

(10月27日青山学院大学経営学部マーケティング学科の講義より覚え書き)