M・ヨート,H・ローセンフェルト『犯罪心理捜査官セバスチャン』(東京創元社)2014.6
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そういえば、あまり書評とかディスク評って書いてこなかった。それなりに読んだり聞いたりしているのだから、週末中心に、だんだんと書いていこうかと思う。
で、まずは北欧ミステリーから。
別に、意識的に北欧ミステリーを読んでいるわけではないが、話題になったものを読んでいくと、結果的に北欧のものになっている。『ミレニアム』に始まり、デンマークを舞台にした『特捜部Q』、アイスランドの『湿地』『緑衣の女』、フィンランドの『極夜』など。
北欧が舞台だから、ミステリーの様式が大きく違うわけではない。なんとなく天気が悪くて、食べ物は美味しそうじゃない、というのが共通点だが、そもそもミステリー大国の英国がそうだからか、違和感はない。
登場人物が、それぞれの個人的な葛藤を抱えていることも多い。これもミステリーには多いかもしれないが、米国のハードボイルドのような様式的なカッコ良さではない。もっと、現実的でなまなましい。
本書も、登場人物が一癖もふた癖もある。一番くせ者は、主人公のセバスチャン。彼が、捜査チームに加わることから話は始まる。
事件自体は凄惨だ。~心臓をえぐり取られた少年。事件を担当する国家刑事警察の殺人捜査特別班に、かつてのトップのプロファイラーが加わる。だがこの男、自信過剰で協調性ゼロの迷惑男だった。~(内容紹介より)
ただし、小説全体の空気感は暗くはない。登場人物の内面に入り込みすぎないことが、独特のテンポを生んでいるのだけれど、この作者(二人の合作)は脚本家ということで、なんとなく納得した。
謎解きは最後まで十分に引っ張られる。途中回収されてない話などがあるけれど、エンタテインメントとしては十分におもしろい。シリーズ化を狙っているなと思ったら、既に3作に達しているということだ。
先にあげた北欧のミステリーだが、もう一つ共通点がある。暴力シーンの描写や、犯罪の手口が相当に執拗ということだ。もちろん、小説の主題を描くために必然性があると作者が信じているからだと思うが、僕は結構苦手である。
そういうシーンはある程度流しているのだが、人によっては読むのが厳しいと感じるかもしれない。
この「セバスチャン」は、そのあたりも含めて薦めやすい。北欧ミステリーの、内面過剰に少々食傷気味の人にはちょうどいいんじゃないかな。