中二病満開。ネゼ=セガンとフィラデルフィアのマーラー「巨人」
(2014年6月4日)

カテゴリ:見聞きした

フィラデルフィア管弦楽団 演奏会
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
2014年6月3日 サントリーホール
モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」
マーラー:交響曲第1番 ニ長調「巨人」

アンコール:J.S.バッハ/ストコフスキー:小フーガ ト短調

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遂げられない切ない思い、限りなく広がる妄想、そして飽きることのない狂喜。マーラーの音楽、とりわけ1番のシンフォニーはそうしたロマン性がプンプンと漂う。

といえば聞こえはいいが、要は「中二病」だ。そこには、収拾のつかない想いのかけらがとり散らかって、でもマーラーには相当の楽才があったからまとめることができたのだろう。

そういうわけで、この曲はどこか恥ずかしい。でも、だからこそ臆面もなく思い入れたっぷりに歌ってほしいのだが、一方ではビシッと決めないと、単に恥ずかしい曲になってしまう。

ゼネ=セガンとフィラデルフィアの演奏は、たっぷり感においては相当に素晴らしい。これは指揮者の力量によるところだろう。一方でフィナーレなどは畳みかけて決まったけれど、危ういシーンも多かった。

昨年の、サロネン/フィルハーモニアに比べると、音楽の「中二らしさ」ではよかったけど、アンサンブルではちょっと気になるところもあるかな、という感じだ。

ことに、弦楽器がデリケートな場面になるといろいろ気になる。三楽章など、コントラバスは相当厳しかったし、その後静かなところになるとどこかおどおどしたアンサンブルになる。

ゼネ=セガンは、そうした弦楽器に対して実に丁寧に、時には煽るかのように朗々と歌わせる。また管楽器の主体性を大切にして、伸び伸びと吹かせる音づくりだ。そして、思い切ってテンポを揺らす時は相当に、大胆。すすり泣くような弦に、誇らしげなブラスなど、正しい中二病満開だ。

もちろん、褒めているのだ。

アンコールは、ストコフスキーが編曲したバッハの小フーガ。ゼネ=セガンの、この楽団への思い入れがよく伝わるいい選曲だったと思う。

一曲目のジュピターも結構アクセントのハッキリした演奏で、これはこれで面白いと思った。モーツアルトの他の曲で同じようにできるかはともかく。

いずれにせよ、ゼネ=セガンは機会があれば何度でも聞いてみたい。音楽をぐつぐつと煮立てることについては、相当な腕前だと思う。