昨日から大学の講義が始まった。
「現実」に即したマーケティングの話をするよ、というガイダンスをして、とりあえず消費増税と消費行動の話をした。
で、黒板に「逆進性」という文字を書いて聞いてみた。
「この言葉、聞いたことある人?」
100人足らずで見事に、ゼロ。とりあえず説明して、これが政策的には低所得者の負担増対策の議論になるし、マーケティングでは階層化対応の施策が必須だよねとか、ザックリ話しをした。説明すればすぐわかる。
「逆進性」を全然知らない、というと周囲には驚く人も多い。ただ、僕はそんなもんだろうと思った。学生が無知、というより普通の社会人でも知らない人が多いことを経験的に感じていたからだ。マーケティングなど、消費の前線にいる人でも結構知らない。
僕は大学三年の時に知ったけど、それはロールズの社会正義論とかをゼミで学んだからで、消費税もない時代には専門用語だったはずだ。
じゃあ、逆進性ってどのくらい一般的な「常識」なのか。そういうのって新聞とか読まないからか?と思って調べてみた。つまり「逆進性」で記事検索をかけてみたのだ。
どれくらいあると思います?
日経を過去一年でみると、14件!月一度くらいのペースだ。隅から隅まで読んでも「逆進性」という言葉に触れるのは結構難しいかもしれない。ちなみに朝日だと34件。ただ、これは投書欄とかも結構目立つ。
もちろんネットで調べればいくらでも学ぶことはできる。ただ、税制に関心を持って自ら調べる人はそうそういないと思う。税については自分も会社員をやめてから初めて学んだことも多い。
これは学生の知識レベルというより、大人も含めた税への理解と関心の問題だと思う。
テレビで街の声を拾えば、「増税で困りますよ」とか「有効に使ってほしい」とか、したり顔で話している大人も、逆進性の問題や、自分が相対的にどんなポジションにいるのかはあんまりわかっていないだろう。
この逆進性対策のために軽減税率も議論されるわけだが、品目をどうするかという議論に終始してそもそもの目的は忘れられるような気がする。
ましてテレビだと、「午前零時の居酒屋中継」とかいうレベルになる訳で逆進性も何もあったものじゃない。
1つの言葉をいろいろ考えるだけで、日本人の関心やら、メディアのあり方やらいろいろ見えてくるものだな、と改めておもった。