2013年10月11日 歌舞伎座 夜の部
歌舞伎座新開場柿葺落 芸術祭十月大歌舞伎
通し狂言 『義経千本桜』
四幕目 木の実 小金吾討死
五幕目 すし屋
六幕目 川連法眼館
========================================================
今春に新開場となった、歌舞伎座に初めて行ってきた。開館当初は慌ただしそうだったのだが、そろそろ落ち着いたかなと思って先月末に空席を調べたら、おそろしくいい席が空いていた。いわゆる「とちり」の列で、ほぼ中央。
柿葺落公演ということで、秋からはわかりやすい人気演目が並ぶ。11月も12月も忠臣蔵というのは少々驚くが、こういう機会でもないと大物の並ぶ演目はそうそう見られない。
この日も、仁左衛門の「いがみの権太」と菊五郎の「忠信/源九郎狐」が客席を沸かしていて、こうなると舞台自体について特に書くこともない。「とてもよかったです」と子供の感想文の域を出ないわけで、そもそも歌舞伎自体はコンサートや落語ほどに接していないので、何か評するには圧倒的に経験が少ないのだ。
そういわけで、今回は舞台の外のお話など。
まず、エントランスから座席周りは本当に良くできていると思う。特にシートの前後のピッチが広くなったのはありがたい。新しいホールがゆとりあるかというとそうとも限らない。東京宝塚などはかなり窮屈だ。
素晴らしいと思ったのは、音。セリフも義太夫も、楽器の音もバランスがいい。これも新しいからいい、というわけではなくてカテゴリーは違うが渋谷のシアターオーブなどかなりひどい。先の東京宝塚もそうだが、複合施設のホールはどこかに無理がある。そういえばオーチャードもダメだ。そもそも東急はまともなホールを作れないのだろうか。
話が、逸れた。
今回は、初めてなのでいろいろ一通り試してみようと、幕間の食事も予約したのだが、やはり30分では慌ただしい。これ、たまに食べるたびに同じこと思って「やっぱ弁当だよな」と思うが、今回はご祝儀なので。ただ、以前あったおでん屋さんやカレーがなくなっていた。リニューアルした施設にありがちなパターンではあるけれど。
あと、字幕ガイドは個人的にはイヤホンより遥かに使いやすい。もっとも、使用している人は、見渡す限りはいなかったようだが。
それにしても考えてみると、仁左衛門、菊五郎、そして吉右衛門、幸四郎の兄弟などみな70歳前後の同世代である。亡くなった團十郎もそうだ。かれこれ30年以上、第一線のように感じる。
ただ仁左衛門は右肩を痛めて来月から休演ということで、この日の所作も右手をかばうことがあった。三津五郎も手術で休演になる。こうして、また誰かが代わりになり負担が増えるという循環にならないのだろうか。
もちろん、彼らは間違いなく千両役者だ。客も喜ぶ。柿葺落となれば、彼らに頼るのもわかるがさすがに無理があるようにも思う。
などと思ってたら、今朝のニュースで吉右衛門も味覚障害を患っていたという。
プロスポーツでも特定の世代に実力者が集まることがあるようだが、落語や将棋などいわゆる伝統芸能の類はその傾向が強い気もする。じゃあ、次をどうするか、とその辺りを考える人はもちろんいるのだろうけれど。
2階廊下の「在りし日の名優」の写真の端に勘三郎を見止め、やはり少々胸騒ぎがするのだ。