缶コーヒーのCMで見える「標的」は?
(2012年10月17日)

カテゴリ:マーケティング
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今日は、セグメントとターゲットについて具体的な事例を見ているわけですが、何度も言うように「性・年齢」だけで、ターゲット探っていくのはかなり困難になっています。そこで重視されているのが「消費行動変数」という視点です。(中略)
いろいろ変数を見てきましたが、次は使用頻度(user rate)についてです。これは、ユーザーが、そのカテゴリーをどのくらい使用するかという頻度によってセグメント分析をします。
ここで、問題になるのはいわゆる「ヘビーユーザー」という存在です。全体では少数派だけれど、多くのシェアを消費している場合。たとえば20%くらいの人が、市場の80%を消費しているのであれば、この20%の人々を徹底的に研究してターゲットにしようとするわけですね。
これは、モノによって全く違います。飲料で言うと日本茶というのは、それほどのヘビーユーザーはいません。そして嫌いな人もいない。どうでしょう、季節によるだろうけど平均すれば、みんな週に1~3回くらいは飲んでいるんじゃないかな?
じゃあ、缶コーヒーだけど、飲まない人は?あ、結構いますね。じゃあ、飲む人…で、そのうち週3回以上の飲む人は?
なるほど、缶コーヒーの場合飲む人が結構限られていて、かつその人たちがやたらと飲むという市場です。学生だと、毎日も飲まないかもしれないけれど、社会人にはヘビーユーザーも多い。何本も習慣的に飲む人もいます。そして、圧倒的に男性です。
そして、職業的には大きく二つにわかれます。一つはいわゆるオフィスのサラリーマン。こちらは、シャキッとしたいという覚醒のニーズです。あまり甘くない、あるいは無糖も欲しがるでしょう。
もう一つは、工事や運輸などの現場で働く人。こちらは、体を使うので糖分を欲します。
そして何よりターゲットの像が違いますよね。
簡単にいうと、缶コーヒーの広告はあまり「カッコ良すぎる」とうまくいかない。ちょっと泥臭いくらいがいいんです。実際に見てみようか。


まず、サントリーのBOSS。トミー・リー・ジョーンズという大物俳優を使っています。彼の職業に注目してください。「宇宙人」なんだけど、工場で力仕事したり、引越ししたり、屋台引いたりしてます。かなりターゲットを意識してますよね。
またジョージアの小出恵介がちょっと前に出ていたCMがこちら。工事現場で働いていて一休みしに自販機のボタンを押すと、向こうには水着を来た美女がいるという設定。実は、このシリーズの別のバージョンで彼はスーツを着てます。つまり両方のターゲットを意識している。
そして、缶コーヒーのユーザーは、どちらかというと派手ではないのでしょう。言葉少なで、ちょっとストレスや疲れを内に抱えているように感じます。このあたり、キリンFIREの江口洋介の演じるサラリーマンの設定が興味深いですね。
彼は脇役なんですね。プレゼンテーションでも、バックでPCを操作してます。オフィスだけじゃなくて、倉庫まで行って在庫をチェックする。オフィスと現場の両方を意識しているという、何ともわかりやすい設定です。
また、彼も無口のようで言いたいことをグッとこらえて、コーヒーで流し込む。BOSSも矢沢永吉以来そうですが、ナレーションの多くは「心の声」です。リップシンクロしないんですね。
というわけで、缶コーヒーのCMがどこか似てるな~と思ったとすれば、それはヘビーユーザに焦点を当てた結果なんです。マーケティングの意図を読む上で、CMというのは大変にいい素材だということです。(10月15日青山学院大学の講義より)