2012年07月アーカイブ

“The Economist”に電通のイージス買収を取り上げた記事があったので、ちょっと日本語にしてみた。要約すると

  • いい判断だと思うが50億ドルとは、マジぶったまげたな、もう
  • ただ、企業文化の違いを乗り越えるのは結構大変だよん
  • そういえばシュワルツネッガーの「チチンブイブイ」の時は驚いたなあ(←なんで今さら)

ホント、拙い文なので参考までと言うことですが。

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本社ビルを覆うグレーのガラスのように、電通を外から窺い知ることは難しい。アジアでは最大の広告代理店で、2001年の売上総利益は3,300億(42億ドル)を超え、日本の伝統的広告の市場の約30%をおさえている。そして日本のメディアに対して過剰ともいえる影響を及ぼしていると、識者はこぼす。東京の高千穂大学の新津重幸は「日本の情報コントロールに、十二分なパワーを有していることを疑う余地はない」と言う。

 しかしグローバルな舞台において、電通は端役に過ぎない。売り上げの84%を日本市場に依存して、その足元は縮小している。そこで、既にご存知の通り、7月12日に電通はロンドンを基盤にするイージズを傘下に収めた。そして、その価格には思わず瞠目したものだ。そう、シュワルツネッガーが日本のビタミンドリンクのCMにファンシーな服で登場した時と同じくらいの驚きといえる。電通は32億ポンド(50億ドル)を現金で支払う予定であるというが、それは当期純利益の19倍である。

 このニュース以前にも、広告業界では6月にはWPPがデジタルマーケティングファームのAKQAを5.4億ドルで買収し、今月初めにはフランスのピュブリシスがロンドンのBBHを1億ユーロ(1.2億ドル)で傘下に収めるという動きがあった。しかし電通の欧州進出で、そうした動きもすっかりかすんでしまった。

 いろいろな面から見て、この買収はよい選択だろう。イージスは電通の資金力と腕力の恩恵を受ける。一方で、電通はイージズのメディアプランニング/バイイング、とりわけデジタル分野における高い専門能力から利益を得るだろう。日本メディア界の王(top trumpeter)はついに悲願の欧米進出を果たし、日本での利益は58%程になる見込みだ。イージスの役員会はこの件を承認し、最大株主であるバンサン・ボロレはしてやったり。さて、これから何の問題があるのだろう?

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(2012年7月18日)

カテゴリ:広告など
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電通が思い切ったことをやった。4000億を投じてのM&Aの目的などについては、いろいろと書かれている通りだろうし、あえては書かないし、将来について言えば全く分からない。ただし、この買収のカギを握るのは人材マネジメントに尽きるのだろうと思っている。
その一方で、ふと思ったのは「電博」という言葉は本当に無意味になるのだろうな、ということだった。
電通は単体で博報堂の2倍以上の売上げがあるが、博報堂はNo2だから得をしてきた面がある。代表的な代理店は「電博」というわけで、ドラマに出てくると「電王堂」とかになるのだ。
何となく「電通や博報堂」みたいなセットになっているので、それなりに競っているように見える。ただ、トラック競技で言うと最後の直線でそれなりの戦いになっているけれど、片方の選手は実は2倍の距離を走っているようなものなのだ。その上で、個々のプランニングの品質では競り合う局面もそれなりにあって、就職希望の学生などは時折錯覚を起こしたりするようだけど。
しかし、今回のM&Aで電通は競技場の外へ走り出してしまった。企業体としては、過去とはまったく異なる競争の世界へ突入したと思っている。

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気になる数字があった。小沢一郎の新党に対して「期待する」と応えた人の比率だ。
同じような世論調査が出ているのだけれど、朝日が15%読売が16%共同通信が15.9%という感じで、ほぼ同じ。新聞などの世論調査は時には大きく数字がバラついてネットでは陰謀論が渦巻くこともあるけれど、冷静に見ると大体は世論の鏡になっている。
で、この新党について論じるつもりは全くないのだけれど、何で気になったかというと、この「期待する」割合の数値それ自体が、マーケティングを仕事にしている人があれば、「?」という引っ掛かりを持つと思うからだ。
気になるのは、「16%」という数字なのだ。やや差はあるけれど、どうやら期待する人は16%前後。
というのはロジャースの普及理論でいうところの「イノベーター/Innovaters(2.5%)」と「アーリーアダプター/Early Adopters(13.5%)」を足した数字。ここを超えれば一気に普及が広まる目安として扱われてきたものだ。
一方、ハイテク商品の市場を分析したところ、この16%に大きな溝(キャズム/Chasm)が存在するという論考があって、これはジェフリー・ムーアの「キャズム」という本で論じられた。
政治における期待度を。普及理論やキャズムと一緒にするのは、冷静に考えると問題があるのとは思う。そもそも「期待する」と言うことは「購入する」より、遥かに簡単だし。しかし、16%という数字は今後を考えると実に興味深い。
「大きな広がりを持つ一歩手前」なのか、「溝を前にした一歩手前」なのか。
数字自体はあまり盛り上がっていないように見えるが、一方で、今の政党支持率推移を見ると16%という数字は「各政党の支持率の中では最高」というのも事実だったりする。
一方で、この16%という人々がイノベーターであり、アーリーアダプターなのだろうか?というのも素朴な疑問だ。
実は、普及理論によれば、全く遅れた人々「ラガード/Laggards」もまた16%存在しているんだけど、このことについては敢えて突っ込まないことにしておこう。