2011年09月アーカイブ
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新聞によって、内閣支持率の数字が違うことについて先に書いた。つまり、朝日と毎日だけで指示でも不支持でもない、「それ以外」が多くてその結果支持率の数値が下がらざるを得ないということだ。
いろいろ各社の調査を比べたが基本的にはRDDという、ランダムに電話をかけて回答してもらうという方法である。
ところが、気になったことが1つ。回答率がかなり違うのである。最終サンプルはどこも1000前後なんだけれど、それだけの数を集めるためにかける電話の数がかなり違うのだ。
最高の共同は70%だけれども、朝日は59%。同じような人数に回答してもらうのに、かけた電話の数は300件以上朝日が多いのだ。これはどうしてなのか原因は推定でしかないけれど。
・調査員の電話の技術が異なる
・「朝日です」と名乗ると断られることが多い
・電話をかけた対象者適性の判断が厳しい

そんなところだろうか。
結果としてサンプリングが正しいかどうか、は敢えて言及しない。もしかしたら強引な電話セールスをする「アサヒ」関係のきぎょうがあるかもしれないし。
ただし、電話調査といってもその方法は見えないところでかなり異なっているのでは?という推測は成り立つ。
「その他」が妙に高かったり、回答率が異様に低かったりと、今回の朝日の世論調査は疑問が多い。どなたか、思い当たる理由があれば教えてほしいと思う。



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テレビの件は、一回休み。というのも、昨日の朝刊各紙の発表した内閣支持率でどうしても気になることがあったからだ。
全般に「高め」というニュースだが、何と53%から67%まで思い切りばらついている。こういう数字が出ると、巷では特にネット上では懐疑的なコメントが溢れてくる。所詮こうした数字はねつ造であるという内容だ。
陰謀史観というのはいつの時代にもあるし、マスメディアへの疑念が出てくる土壌はあると思うのだけど、今回の数字はリサーチ上の観点から見てもかなり興味深い。
というのも支持率というのは基本的に「二択」である。いくつも選択肢があるような調査ではないので、今回のように1000前後のサンプルならそんなにブレないと思う。それなのに、朝日・毎日というどちらかと言えば論調が似ている二紙が申し合わせたような数字なので、突っ込まれてしまう隙はあるわけだ。
僕はこういう数字をねつ造とは思わないが、今回の数字はちょっと突っ込まれる隙はたしかにあると思う。まずは表を見ていただきたい。

>> 朝日の内閣支持率はなぜ低い?の続きを読む



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というわけで、民放各局が営業利益を確保するために制作費を削減せざるを得ない構造がわかるわけだが、実際に10年度と前年度との営業利益の伸びと、制作費の増減を単純に比べてみておくこう。
営業利益を伸ばすためにはもちろん制作費削減以外の手だてもあるので、この表自体はいささか乱暴だとは思っている。ただし、制作費削減が利益に直結しやすいことは確認できるだろう。
さて、制作費削減は視聴者離れ、つまり自社の価値低下というリスクを孕むわけなのにどうして利益が重要か。上場企業だから、と言えばそうなんだけれど、ここには別の側面もある。
設備投資だ。
決算説明資料を見ると、テレビ東京以外は設備投資額を記している。2010年度実績と、11年度の見込みをグラフ化してみるとまた、いろいろなことが見えてくる。
まずテレビ朝日の投資額が145億円と図抜けて多い。ただ決算資料には内容が書いていない。何なのかと思って有価証券報告書まであたって分かったのだが、西麻布に200億円余りで土地を取得し開発するようで、そのうち100億近くを払い込んだことが効いている。次年度も、この支払いで投資がかさんでいると思われる。
他の放送局についても、報告書を調べると大体が放送設備などへの投資である。テレビ朝日も土地取得額を除くとおそらく50億程度になるわけで、それで設備投資額を比較するとどうだろうか。

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ここでもフジテレビがアタマ一つ抜けて100億円以上の投資をしているのである。報告書には「ハイビジョン対応のためのスタジオ設備、地上波デジタル放送対応のための放送設備・機材、報道関連のネットワークを中心に」と書かれている。
どうやら他局に比しても、フジテレビは設備投資への資金を確保することを重視していることがわかる。もっとも設備投資は時間をかけておこなうので、地デジにしてもかなり遡って比較しないと一概には言えないが、投資に注力していることはたしかだろう。
つまり、フジテレビは高視聴率と広告主からの人気を背景にしたこんなサイクルを描いてきたのだろう。
「高い売上→高い利益→思い切った設備投資→より魅力的なコンテンツ」
ところが肝心の売上が頭打ちになったので、どうしたか。利益水準を確保するために制作費を削減し、設備投資を確保した構造が見える。
そして、そもそもこのサイクルには疑問もある。そもそもテレビ番組というのは「設備で作る」ものなのだろうか?

>> 数字に見る「フジテレビ騒動」の本質。その4の続きを読む



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さて、制作費削減をめぐる厳しい状況を見てみたが、売り上げや利益はどうなっているのだろう。まずは各局の売上を2009年度と2010年度で眺めてみよう。参照はこちらのページがわかりやすい。
2009年度は、ご記憶のように前代未聞の経済後退だったので、各局ともかなりのマイナスだった。2010年度はどうだったかというと、フジテレビとテレビ朝日が微増で、あとは微減だったということがわかる。このグラフを見ている分には各局ともあまり違いがないように思えるが、営業利益を見ると「差」が明快になる。
まず、フジテレビの伸び率が高いことに目が行く。98億から222億と2倍以上の伸長だ。ただし絶対額については、NTVの方が高い。一般的に言って、営業利益は「本業の実力」である。この数字に執着すること自体は経営者としては「普通の感覚」だとは思う。
つまり各局とも「減収増益」あるいは「増収率<増益率」(除テレビ東京)という状態の、10年度決算だ。これはステイクホルダーによって評価、というか損得のようなものが異なってくる。原価を削ってでも利益を確保すれば株主からの評価は高いだろう。しかし、社員にとってはひたすら忍耐を要求されるし、もっともしわ寄せを食らうのは当然発注先の下請け企業なのだ。

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そして、フジテレビは売上では1位であるものの、営業利益では日本テレビの後塵を拝している。そして、日本テレビが利益を「キッチリ」と伸ばしているのに対して、フジテレビは「エイヤ!」という感じの伸ばし方であることが、グラフから直感的に理解できるだろう。売り上げに比して、利益を伸ばしているようなという時は、必ず社内外のどこかで「無理」が起きるのだ。放っておくとフジテレビは「収益力の低い企業」という評価になってしまうだろう。これはたしかに難しい局面ではある。
ただし、フジテレビのみでなくテレビ局に言えることなのだが、そもそも「減収→原価低減」という発想が本当に正しいのだろうか?

>> 数字に見る「フジテレビ騒動」の本質。その3の続きを読む