数字に見る「フジテレビ騒動」の本質。その5
(2011年9月7日)

カテゴリ:マーケティング
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コメント(2)
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フジテレビと民放業績についての記事だが、とりあえずデータ分析は最終回。
今日見ていただきたいのは、在京各局の年間視聴率(プライムタイム)を2004年と2010年で比較したものである。データの出所は、TBSのホームページだ。
まず一見するとわかるように、すべての局が視聴率を減少させている。6局合計が72.2→63.2だ。ゴールデンでも同じ傾向で全日はもっと厳しい(詳しくはこちらの下の方)。
で、もっとも派手なのはTBSで12.9→9.9と3ポイント減少。その逆がテレビ朝日で12.3→12.0と0.3ポイントに留まっている。
フジテレビは14→12.6だが、2004年から7年連続でいわゆる「三冠王」である。
ただし、この三冠も決して安泰ではない。それはまず、全体の視聴率が減少していること。それに加えて、他局が追い上げているということである。
そのことをわかりやすく見るのであれば、「6局内シェア」がいいのではないかと思って分析すると面白い風景が見えてくる。

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まず目立つのはTBSの減少である。テレビ東京も厳しい。そしてシェアを伸ばしているのがテレビ朝日。そしてNTVだ。つまり総視聴率減少の中で、踏みとどまっていることがわかる。特にシェアで見ると、上位3局は1ポイントの中にひしめいており、「3強」ということだ。
もっとも、これが売り上げに反映されないことも事実だ。セールスの現場でフジテレビの人気はまだまだあるわけだが、ジンワリと構図は変化している。かつては明らかに1馬身以上離していたけれど、半馬身から首の差にひしめいているのが今の視聴率競争の状況だ。
ここまでの数字を見てみると、フジテレビの課題は「民放全体の課題」であり「トップ企業ならではの課題」ということがわかる。


整理してみるとこんな感じだろうか・
・最大の売上高であり、制作費も最高だった
・一方放送事業への設備投資も大きくそのためにも利益を確保しなくてはならない
・不動産事業のような収益は少ない
・そのために売り上げが頭打ちになると制作費削減に大ナタが必要になる
・一方で視聴率はジワジワと差が詰まっている

一般的に言ってトップ企業というのは「最高速で走る最大の船」という感じだ。巡航の時はいいが、舵を切る時が問題なのである。
僕はフジテレビの編成が特に偏向しているとは思わないけれど、舵のとり方が難しい局面に来ていることは、数字を見ればたしかだと感じる。
また、このままいくと日本のマスメディア・グループは「読売」と「朝日」の存在感が増していくようにも思う。一方で、フジテレビは「フジメディアホールディングス」の中核企業であり、赤字のラジオ事業(ニッポン放送)なども支える家長のような立場だ。産経とのつながりはもちろんあるけれど、事業的にはテレビが稼いでいかなくてはならない。
というわけで民放各局の公開データを眺めることで、将来のメディア地図も想像できるわけだ。「フジテレビ=反日」とか騒ぐんじゃなくて、こういう分析からフジテレビの「焦り」が見えてくるのではないか。
しかし、総市場がここまで縮小している場合、一般的には業界再編が普通である。その普通が通らないのが許認可ビジネスの世界だったりするのが、そんなことも言ってられない日が来るように思う。



数字に見る「フジテレビ騒動」の本質。その5」への2件のフィードバック

  1. 笑鬼 より:

    クモの巣グラフで見せた視聴率が、なるほど、一目瞭然。案外、このスタイルで、各局が定時に表示してくれると、各局の焦り、具もつかないバラエティの強弱も浮き彫りになりそう。もちろん、許認可の礎である、報道力への関心と信頼感までも見透かされることになりそうだ。また各局の韓ドラ視聴率の対比も、選球眼が問われることになろう。放送外収益の配分が極端な局は、許認可の再考も検討されるべきであることだし・・・。家電メーカーの開発するTV受像機とパソコンによる蓄積型試聴習慣が、ますますタイムシフトを混乱させることで、マスメディアの存在感は、岐路に立ちすくんで行くことだろう。、

  2. 山本直人 より:

    ありがとうございます。

    多分、近い将来に再編は避けられないんでしょう。でも、スイッチ入れればとりあえずあれだけのコンテンツがタダで見られるメディアなので、今後はそれを支持する人も増えるし、使命はまだまだあると思うんですけれども。