2010年10月アーカイブ
(2010年10月29日)

カテゴリ:マーケティング

ランチタイムにエレベーターと来て「正しい会社の見分け方・その3」はありがちかもしれないけど、「トイレ」だ。これも、また情報量の多い場所ではある。
これについては、とある本にも書いたのだけれどかつて凄い取材力を駆使して就活をしていた新入社員がいた。彼は「トイレの掃除のオバサン」に「この会社の社員はどうですか?」と様子を聞いたらしい。立派な会社でも、品格の高低は必ずあるけれど、それはトイレのマナーや清掃員への態度に出るだろうという仮説を持っていたわけだ。
いや、この仮説はかなり正しいだろう。
彼によると、「立派だけど、強引でアレコレの噂のある企業」というのは、やはりトイレのマナーもそれなりによろしくないらしい。あえて実名は書かないけれど、非常にわかりやすい社名が挙がっていた。
まあ、学生が清掃員に取材するチャンスはなかなかないだろうけれど、ぜひ会社に行ったらトイレに入って生態を観察するとおもしろい。
洗面所や便器の使い方が乱雑な会社というのは、言うまでもなくNGだろう。あと、男子トイレというのは、用を足しながらの会話なども聞けて、結構こういうので雰囲気がわかることもある。さすがに、大切な話はしないと思うけど。
そうそう。男子トイレだと個室と外でそれぞれ人がいるので、おもしろい経験もできる。
僕がもう会社を辞める直前の頃のことだけれども、用を足していると個室で携帯電話が鳴った。どうするのか、と思ったら出たんだな。個室の中で。
「ハイ、お世話になっております。はっ?見積もりの件?ハイハイ……」
どうやら、クライアントに出した見積もりの件で、先方から電話がかかってきたようなのだ。でもって、いきなりトイレの個室で見積もり交渉が始まったのだ。
聞いていたい気もしたが、なんとも忍びなくてトットとトイレを出たけれど、あの交渉はきっと押し切られたと思う。
だってそうでしょ。
「ウンコしながら見積もりの交渉をする」
それでコトが有利になるなら、みんな見積もり交渉はトイレでするってば。しかし、先方はまさか「相手がパンツ下ろして電話してる」とは思わないだろうな。
いまにして思うと、広告業界はあの頃から曲がり角を迎えていたのかもしれない。



というわけで、その2は「エレベーター」だ。ただ、今はエレベーターホールまでにゲートを設けているところが多く、学生が乗る機会は少ないかもしれない。面接とか始まればあるのかもしれないが。
で、エレベーターの何がポイントかというと「閉」のボタンだね、やはり。
これを、やたらとガチャガチャ押すような社員が多い会社は「要注意」ではないかと。別に「閉」ボタンを押すことはいい。そこまで細かくいうこともないし。問題は「押し方」。何度も押して、途中で開いたりすると舌打ちするような社員を時折見る。
そこまで時間に追われて苛立っているというような職場は、何か問題を抱えているんじゃないか?と思うのだ。
この話を知り合いの人事の人に話した。彼はその後いろいろな会社に行く機会が多かったそうだけれど、この観察は「テキメンに当たる」という。「閉ボタン・ガチャガチャ」の多い会社は、やはり「それなりの問題」があるということだろう。
ちなみに、僕は自己管理の一つの目安として、次の3つのことを気にしている。
「エレベーターの閉ボタンを押さない」「信号が点滅したらわたらない」「高齢者には席を譲る」
で、ついついこれができない状態になっている時は、何かの問題が自分にあるということだと思っている。時間に追われたり、ついつい焦るというのは、だいたい自分のせいだからだ。
さすがに、電車で席を譲らないほど疲れたことはないけれど「閉ボタン」「点滅横断」は、たまにやってしまう。だいたい、前日に遊びすぎて、いろんなことが後手後手になった結果であることが多い。仕事が多くて時間に追われたことはあまりないんだけど。
いずれにせよ、エレベータというのは小さな密室で決して快適な場所ではない。ちょっとした譲り合いとか、その際の挨拶とかでその会社のことが結構見えてくる場所だと思う。



結局、いろんな「ナビ」がオープンすることが就職活動のスタートということなのだろうか。リクルートが何を約束しようが、学生が浮き足立っていることは大学で教えていればすぐにわかる。
さて、ナビではわからない「正しい会社の見分け方」を今日は書いておこう。これは、大学生に対しての実際のアドバイスの1つだ。
卒業生を訪問できれば一番いいのだが、最近は個人情報の関係でそれも難しい。また大学によっては、企業における卒業生数自体が少ない。そういう時にどうするか。とりあえず3つ。
その1.昼休みにオフィスから出てくる社員の顔を見る。
よく、「面接は顔」という噂もあるが、それは半分くらい当たっている。美顔である必要はないが、学生が思っている以上に顔の情報量は大きい。だったら、学生も社員の顔を見ればいい。一番いいのは12時前後である。
出社の頃は、どの会社もそこそこ疲れている。それは仕方ない。しかし、いい会社であれば12時までに「いい顔」になる。そして、仲間とランチタイムに出てくるので職場の雰囲気もすぐにわかる。
この「仲間」も重要だ。自宅の近くにメガバンクの支店があるけれど、ここから出てくるのは中年の男性連ればかり。つまり、タテ関係が死んでいる。話を聞いていても実につまらない。
年齢の差があり、また男女のグループだったりと、活気のある会社はランチタイムのグループも元気だ。朝や夜よりもランチタイムは会社の縮図になりやすい。
近所に飲食店があるのに、社員があまり出てこない。もしくはコンビニがやたらと混んでいる場合は要注意だと思う。社員食堂やコンビニで昼飯を済ます人が多いというのは、いろんな意味で「余裕」がない。金銭的な面だけではなく、時間にも追われていることが多い。
もっとも社員食堂が充実している、ということはいいのかもしれない。しかし、そうした福利厚生を前面に出している会社は、「何かを隠している」という可能性もある。だって、一旦給料上げたら下げるのは難しいけど、社員食堂のコストダウンほど簡単なものはないでしょ。つまり「いつでも手のひらを返せる」制度だから。
そもそも、「外に行こうよ」という感覚が少ない会社というのは、いろんな意味で「追われている」可能性を疑っていいと思うのだ。
特に今日のような秋晴れの日だったら、ランチタイムは「お楽しみ」の時間だ。ぜひ、社員の顔を見て一方的に面接されることをおすすめしたい。その2は明日書くね。



ヴッパータール交響楽団演奏会 
指揮:上岡敏之 
10月18日 19時 サントリーホール
モーツアルト 交響曲第28番 ハ長調 K.200
マーラー   交響曲第5番 嬰ハ短調
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いろいろと評判の指揮者だったのだが、たまたま聞く機会に恵まれた。
最初のモーツアルトでまず棒さばきに目が行った。細かく拍を刻まずに、オーケストラと歌うようなスタート。時折、弦楽器のハーモニーが、思わぬ厚みを見せる。また木管やホルンの響きも、劇的でかつ美しい。ここまで聞いた印象では「自然な音楽をつくる指揮者」というイメージで、後半が楽しみになる。
ところがマーラーは全く想像しなかった音楽だった。
表面的な面でいうと、テンポの緩急が意外なところで動く。また、低弦や内声の強調、ピッツカートなどのアクセントなどが大きなアクションとともにいやでも目立つ。
そして、マーラーの混沌とした思念をぶつけているかというと、フィナーレを聞き終わった時には、比較的爽快な印象が残る。コンサートとしてはとてもいい体験だったのだけれど、後から思い出すと「どうしてああしたいのか」が何だかスッキリしない面もある。
とはいえ、彼の指揮をまた聞きたいか?というと「聞きたい」と迷わず答える。つまり気になるのである。
指揮者をシェフにたとえるのであれば、彼はあえて肉の内臓まで使った料理が得意なタイプなのだろう。

>> 意外性と悪趣味の境界線~上岡敏之というシェフ。の続きを読む



(2010年10月12日)

カテゴリ:マーケティング
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秋になっても「晴れれば夏日」の一方で「降れば”11月上旬並み”」という天気が続いている。相変わらず、猛暑の余韻を感じる秋になってしまった。
今年の夏は、久しぶりの猛暑だったが、消費においても変調が起きた。7月は猛暑効果といわれていたけれど、8月の流通関連の数字はどれもよくない。コンビニエンスストアは1%増ではあるけれど、客単価は落ちている。スーパーは前年比マイナス。また8月のビール類の売上も微減だった。
秋物の衣類が不調とか言われているけれど、それだけではないと思う。夏や冬の「気温効果」が消費に反映されにくくなっている。これは、高齢化の影響が来ていると思う。
そもそも、気温が上下にぶれることで行動が活発なるのは若い人だ。子どもは、雪が降れば喜ぶけれど、大人はうんざりする。若い人がスキーに行ってた頃は雪もプラスに働いたけれど、それも減ってくれば単なる厄介者としての側面が強くなる。
夏も同じ。昼からプールや海に行ける人は嬉しいけれど、大人はそうはいかない。それどころか「暑いと人が死ぬ」ことが、これほど明らかになるとは思わなかった。
この夏、大病院に関わりのあった人はわかると思うが、8月はどこも満床だった。熱中症で運ばれたまま入院する人はもちろん、高齢者の体調不良は相当に多かった。さらに、火葬場はどこも数日待ちという状況だったという。
そこまで体調を悪化させないまでも、日中に人がいなかった。こういうのは、平日の昼に住宅地で過ごしていればすぐにわかる。一方、夜の20時過ぎにはスーパーが混んでいた。ビール類は伸びない一方で、家計調査の「梅干し」が大きく伸びた。暑いことで「ビールを飲むか」よりも、「夏バテ予防」のニーズの方が高くなるのは明らかに高齢化の影響だろう。
この傾向は、今後どんどん強まるのだろう。暑くなれば、プールや海に人が群がるニュースは毎年流れているが、そういうシーンに参加している人の絶対数は減っている。今夏は、海水浴場も決して客足は伸びていないところが多い。
「夏は暑いほど、冬は寒いほどいい」という言葉を残したのは、ダイエー創業者の中内功と言われる。彼は「売上はすべてを癒す」ともいった。戦後の常識は、また変わっていく。