先週、小霜和也君と飲んだ。 彼は、いまno problem という広告プランニング会社の代表であり、コピーライターで、クリエイティブ・ディレクターだ。まあ、広告業界の人であれば、ご存知の方も多いはずだと思う。 彼と僕は、博報堂の同期だった。86年に入社して2人ともクリエイティブに配属された。その後、僕は幾つかの職種を経て2004年に辞めているのだが、小霜君は98年に辞めている。しかし、彼はずっとクリエイティブ畑の仕事をしていた。ただ、コピーだけ書いているわけではないのだけれど、本籍も現住所もあまり変わっていない、という感じである。 2人で飲むのは、これが初めてだった。 有体に言うと、まあ別にそれほど近しいわけではなく、まあ、何となくそうだったというわけだ。 きっかけは、昨年出版した”買う気の法則”の感想を、彼がホームページ経由で届けてくれたからだ。それから、また何ヶ月も経ってやっと会うことができた。 まったく異なるような道を歩んできながら、いまのマーケティングや広告の現状に対しても問題意識は驚くほど似ていた。それはそれで、単純にうれしかった。 彼は広告学校も主催しているが、そうして育成に関心を持っていることもまた、不思議だった。 そして、今月には単行本を出版するという。 僕たちの世代は、いわゆるマス広告が華やかだった時代を知っている。 ただ、知っているということが「知っている」にとどまっていて、それが現状の突破に結びついていない。そんな意識がある。 それに、過去の体験でも捨てなきゃいけないものはたくさんある。 一方で、メディアをめぐるテクノロジーの変化は早い。その変化をフォローすることは大切だけど、変わらないこともあるだろう。 変わること、変わらないこと。それを見きわめるための議論が重要なのに、極端な意見がどうしても目につく。 実は、小霜君と僕が話して頷きあっている内容をまとめて書いたら、とってもアタリマエのことしか残らないだろう。 しかし、そのアタリマエが忘れられたまま右往左往しているのが、いまの広告ビジネスの姿なんじゃないか。 そういえば思った。「あの人はアタリマエのことしか言わない」って人って、そのアタリマエができてない。その癖、どうでもいいような「名言」が好きだったりする。 気づいた方が、いいと思うな。
小霜和也君と飲んだ。