大騒動のFIFAで、会長が再選された。あまりサッカーに詳しくはないのでその是非を論じるつもりもないんだけど、あの挨拶の最後は驚いた。
両手を挙げて、“Let’s go FIFA!,Let’ go FIFA!”とのたまう光景を何と表現しようかと思って「薄ら寒い」という言葉が思い浮かんだ。
79歳になってなお権力を求める男が、たどたどしく両手を挙げて、日本でいう「ガッツポーズ」みたいな恰好で”Let’s go”だ。
このフレーズは、英語というよりも「レッツゴー」という誰もが知ってるフレーズで、でもよく考えると意外と口にしてないし、身近では聞かない気がする。昔の青春ドラマの熱血教師が口にしてたのかもしれないが。
ただ、今回の”Let’s go”ほど、トホホ感のある”Let’s go”は聞いたことがない。
それにしても、この薄ら寒さって既視感があるなと思ったけど、それは選挙の後の「万歳三唱」に近いかもしれない。ことに汚職などが取り沙汰された人が「みそぎ」と称して出馬して勝ったあとの選挙。
五十肩を疾うに過ぎて、万歳するにも腕が上がってないような議員の万歳と、あのブラッターの姿はどこか通じるものがある。傍からはうかがい知れない権力への執着心が凝縮された感じというのか。
報じられる話では、ブラッターがアフリカやアジアの国に支持された理由は、彼がさまざまな援助を「サッカー新興国」におこなったからだという。だとすれば、これはある種のバラマキ政治と同じ構造だ。
だとすれば、金を出している側は相当苛つくわけで、スポンサーには米国企業も多いわけだから、今回の「米国発」の捜査の背景も想像しやすい。もちろん、さまざまな理由はあるんだろうけど。
大概のニュースはウェブで読むのだが、ああいう姿が映し出す「真実」は一瞬の動画が雄弁だな、とあらためて思う。あの“Let’s go FIFA!”は、「こういう人が頼りにされるんだな」ということを明らかにしちゃったわけで、どんなに国際的な組織でもやってることは「田舎の政治」だということが、透けてしまった気がする。
それにしても、「薄ら寒い」というより、もうちょっと彼のことを上手に表現できないかと思うんだけど。吉田兼好が見たら、相当上手にバッサリ書いてくれるんじゃないかな。