「老害」という言葉への引っかかり。
(2015年5月19日)

カテゴリ:マーケティング,メディアとか

大阪都構想が住民投票により僅差で否決された。

翌朝にあると、facebookなどでは驚くほどいろんな声が飛び交っていたが、出口調査の年代別の賛否を見て「高齢者に負けた」という声が多かった。ただしよく見れば、事情は少々違うのではないか。

高齢層に反対が多いことはわかっていたはずなのだから、他の年代を「説得し切れなかった」ことが敗因だろう。今回もそうだが、選挙でも高齢層が投票率は高い。ただ若年層の棄権層がもう少し動けば、今回の票差は覆った可能性もある。高齢層に負けたというなら、不戦敗と言った方がいい。全国の人口推計でいえば、70代は20代より10%ほど多いが、それ以上に投票率の高さがものをいう。これは2年前にも書いておいた

この際のグラフでは、実数で作っているが、出口調査では各年代とも「同じ幅」にしている。それだと実態がわからないけれど、そういうデータがどんどんシェアされてしまう。

ただし、ネットでは「老害」「シルバーデモクラシー」と言った方が、話が早いようだ。どういう切り口にすればアクセスが増えるかは、すぐにわかる。どんな調査でも若い方がネットをよく使うのだから、ネット上では「高齢者に押しつぶされる若者」という方が受けはいいのだろう。

ただ、その一方でネットの匿名の声を見ていると、「ああ、きっと高齢者へのリアリティが薄いんだろな」と思うことがある。なぜいまだにFAXはあるのか、ガラケーのキャリアメールをどうして使うのか?というのは若い人には疑問だろう。自分の親もスマホで、互いにLINEでやり取りしていればそう思うかもしれない。

少し前の日経ビジネスオンラインに「シニア記者、スマホ勉強会で逆上す」という記事があった。同紙の大西康之氏が「自称シニア記者」として楽天の格安スマホの発表会に出て、いろいろと突っ込むのである。

「キャリアメールはいらない」「店頭でのサポートがない」ことについて、「74歳で一人暮らしをしている母にとっては、auのキャリアメールが命綱である」と断言されていることが印象的だった。

私の母や義父母は、やや上になるが事情は同じだ。つまり、「自称シニア」になりつつある年代にとっては、親世代という「スーパーシニア」が身近にいるのだ。それを肌感覚でわかっているかどうか、はとても重要になる。

また、エリアや職種でも事情は異なる。少し前に東京近郊の内装業や造園業の方をやり取りすることがあったのだが、基本はFAXとガラケーである。この辺りの世界も、ネットを使いこなす都市部の若い人にはピンと来ないのだろう。

自分の周りにはメディアやマーケティングの仕事をしている人も多いので、平日の昼から普通にfacebookに投稿しているが、金融や商社の友人はまったく参加してない。まあ、当然けど、ソーシャルメディアは世界観を偏らせるリスクはある。
ネット自体はオープンなはずだけれど、どんなメディアも排他的になる可能性はある。何かにつけ「老害」と評するのも、「今時の若者」と同じような思考停止に思えるのだが。

追記:もし本当の「老害」を問題にするならば、大企業OBの経営介入は会社によっては相当すごいと思う。これ、きちんと追求してる記事ってあまり見ないんだけど。