草津・重監房というハンセン病の記憶。
(2015年5月14日)

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週末に一人で信州・上州をクルマでまわった。帰路、草津に立ち寄って一風呂浴びてクルマを走らせていると、立て看板が目に入った。

「重監房資料館」(サイトはこちら

どちらかというと、花火大会などでの「臨時駐車場」のような風情の立て看板で、観光施設のような感じではない。カーナビの画面に目を向けると、ちょうど国立療養所の近くだ。ここにハンセン病患者のための療養所があることは知っていたが、「重監房」は知らなかった。ふと興味をおぼえて、国道から脇道へ入る。

しばらく砂利道を進むと、建物が目に飛び込んできた。まだ新しい。2014 年の開館のようで、ちょうど1年経ったようだ。

「重監房」とは、「特別病室」の別称だが、何も特別な治療をしていたわけではない。ある種の監獄のようなものであった。ハンセン病は隔離政策をとってきたため、各施設では脱走を試みたり反抗的な者も出てくる。そうした人を「厄介払い」するための監房だった。

その建物は戦後に取り壊されたが、高さ4.5mの壁に囲まれた絶望の部屋が館内に再現されている。ビデオを見て、再現された監房を歩き、発掘された遺品展示を見る。

重苦しい空間だが、行ってよかった。この施設は患者たちの運動もあり、国(厚生労働省)が建造・運営をしている。あまり広告するという性格のものではないだろうが、草津という有名観光地の近くでもあり、もっと知られてもいいところだと感じた。

そして、この資料館の隣の敷地は患者たちが暮らす平屋の赤い屋根の建物が並んでいる。

写真は撮れないので、こちらのサイトを見てもらえばイメージがわくかもしれない・「乗鞍」「竜王」「赤城」など当地にちなんだ山がそれぞれの舎の名前になっている。

ハンセン病の特効薬は既に確立されており、現在では「治る病気」だ。ただし、かつての患者はさまざまな後遺症を持ったまま高齢化している。サイトのなかに「障害を持った超高齢者の集まり」と書かれているが、現在は国内13か所に1700人ほどが入所者がいる。

今後だんだんと、その人数も減っていくのだろう。

その日は青空が広がるいい天気だった。山を背後に赤い屋根が並ぶ光景は、その歴史をしらなければ可憐で美しくも見える。窓の外に洗濯物が干されているが、静かで人のいる気配は感じにくい。

しばらく、療養所の風景を眺めているだけで、さまざまな思いがよぎる。資料館の内容以上に、この風景がいまでも頭から離れない。

ハンセン病自体は歴史となりつつあるが、「隔離」という発想はまだ社会の中に根強く残っている。最近だってエボラ出血熱やデング熱などの騒ぎでは、過敏な反応も目についた。いつまた、差別が起きるかもしれない。そういう意味ではハンセン病をめぐる問題は、現在から未来の問題だとも思う。

そんなことを考えつつ昨日たまたま、虎の門を歩いていたら日本財団の建物に大型ビジョンがあって、ハンセン病をテーマにした写真が掲出されていて、それも印象的だった。こちらで、見ることができる。