数字に見る「フジテレビ騒動」の本質。その4
(2011年9月2日)

カテゴリ:マーケティング
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というわけで、民放各局が営業利益を確保するために制作費を削減せざるを得ない構造がわかるわけだが、実際に10年度と前年度との営業利益の伸びと、制作費の増減を単純に比べてみておくこう。
営業利益を伸ばすためにはもちろん制作費削減以外の手だてもあるので、この表自体はいささか乱暴だとは思っている。ただし、制作費削減が利益に直結しやすいことは確認できるだろう。
さて、制作費削減は視聴者離れ、つまり自社の価値低下というリスクを孕むわけなのにどうして利益が重要か。上場企業だから、と言えばそうなんだけれど、ここには別の側面もある。
設備投資だ。
決算説明資料を見ると、テレビ東京以外は設備投資額を記している。2010年度実績と、11年度の見込みをグラフ化してみるとまた、いろいろなことが見えてくる。
まずテレビ朝日の投資額が145億円と図抜けて多い。ただ決算資料には内容が書いていない。何なのかと思って有価証券報告書まであたって分かったのだが、西麻布に200億円余りで土地を取得し開発するようで、そのうち100億近くを払い込んだことが効いている。次年度も、この支払いで投資がかさんでいると思われる。
他の放送局についても、報告書を調べると大体が放送設備などへの投資である。テレビ朝日も土地取得額を除くとおそらく50億程度になるわけで、それで設備投資額を比較するとどうだろうか。

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ここでもフジテレビがアタマ一つ抜けて100億円以上の投資をしているのである。報告書には「ハイビジョン対応のためのスタジオ設備、地上波デジタル放送対応のための放送設備・機材、報道関連のネットワークを中心に」と書かれている。
どうやら他局に比しても、フジテレビは設備投資への資金を確保することを重視していることがわかる。もっとも設備投資は時間をかけておこなうので、地デジにしてもかなり遡って比較しないと一概には言えないが、投資に注力していることはたしかだろう。
つまり、フジテレビは高視聴率と広告主からの人気を背景にしたこんなサイクルを描いてきたのだろう。
「高い売上→高い利益→思い切った設備投資→より魅力的なコンテンツ」
ところが肝心の売上が頭打ちになったので、どうしたか。利益水準を確保するために制作費を削減し、設備投資を確保した構造が見える。
そして、そもそもこのサイクルには疑問もある。そもそもテレビ番組というのは「設備で作る」ものなのだろうか?


設備も大事だろうけれど、そのために制作費にしわ寄せしている間に、視聴者はテレビを見放すのではないかとも思う。そのあたりを、次回(多分来週)は、視聴率の推移などをもとにして見ていきたい。
ただ、フジテレビは各局の中でも「放送事業」で勝負しなければならないこともたしかだ。
最近の放送局は本業が赤字で不動産で利益を出すような会社もあるが、フジテレビは、本社ビルの土地がそもそも東京都からの賃借である。もっとも、それが経営を圧迫するほどの額ではないとは思うのだが。
ちなみに、あの本社ビルの年間賃借料は有価証券報告を見ると、8億6400万円ということだ。これ、かなり安い気もするのだけれど、どうなんだろ。