秋になっても「晴れれば夏日」の一方で「降れば”11月上旬並み”」という天気が続いている。相変わらず、猛暑の余韻を感じる秋になってしまった。
今年の夏は、久しぶりの猛暑だったが、消費においても変調が起きた。7月は猛暑効果といわれていたけれど、8月の流通関連の数字はどれもよくない。コンビニエンスストアは1%増ではあるけれど、客単価は落ちている。スーパーは前年比マイナス。また8月のビール類の売上も微減だった。
秋物の衣類が不調とか言われているけれど、それだけではないと思う。夏や冬の「気温効果」が消費に反映されにくくなっている。これは、高齢化の影響が来ていると思う。
そもそも、気温が上下にぶれることで行動が活発なるのは若い人だ。子どもは、雪が降れば喜ぶけれど、大人はうんざりする。若い人がスキーに行ってた頃は雪もプラスに働いたけれど、それも減ってくれば単なる厄介者としての側面が強くなる。
夏も同じ。昼からプールや海に行ける人は嬉しいけれど、大人はそうはいかない。それどころか「暑いと人が死ぬ」ことが、これほど明らかになるとは思わなかった。
この夏、大病院に関わりのあった人はわかると思うが、8月はどこも満床だった。熱中症で運ばれたまま入院する人はもちろん、高齢者の体調不良は相当に多かった。さらに、火葬場はどこも数日待ちという状況だったという。
そこまで体調を悪化させないまでも、日中に人がいなかった。こういうのは、平日の昼に住宅地で過ごしていればすぐにわかる。一方、夜の20時過ぎにはスーパーが混んでいた。ビール類は伸びない一方で、家計調査の「梅干し」が大きく伸びた。暑いことで「ビールを飲むか」よりも、「夏バテ予防」のニーズの方が高くなるのは明らかに高齢化の影響だろう。
この傾向は、今後どんどん強まるのだろう。暑くなれば、プールや海に人が群がるニュースは毎年流れているが、そういうシーンに参加している人の絶対数は減っている。今夏は、海水浴場も決して客足は伸びていないところが多い。
「夏は暑いほど、冬は寒いほどいい」という言葉を残したのは、ダイエー創業者の中内功と言われる。彼は「売上はすべてを癒す」ともいった。戦後の常識は、また変わっていく。