人材のフルーツバスケットで、20代×50代が気になる理由。
(2019年1月7日)

カテゴリ:キャリアのことも

それにしても、2018年は僕の周囲でも「人の動き」が多かった。まあ、それにしても、能力のある人ほど、意外な方向に職を転ずるのだ。もう何というか、人材をめぐる争奪戦は「フルーツバスケット」のような感じになっている。

あの椅子取りゲームで「フルーツバスケット!!」となり、常に人がワイワイしている状況が当たり前になっていて、とにかく「人材」の話は絶えないわけで、そこにはいろんな理由がある。

ひとつには各分野でデジタル化がどんどん進んで、ある程度の「標準装備」は可能になった。そうなると、「結局誰がやるんだよ」という話になる。いろんなシステムは「誰でもできる」ことを目指してきたんだろうけど、同じことをしていては競争には勝てない。

というわけで、求められるのは「より高度な人材」ということになる。

一方でワークスタイルについては、想像以上のスピードで変わっている。4月には働き方改革関連法が施行されて、勤務時間は制限をされる。そうなれば「時間をかけて頑張る人」よりも「短時間で成果を上げる人」へのニーズはますます高まるだろう。

そういうこともあってか、昨年はあちらこちらで仕事を変える人が多かった。大企業間の移動もあるんだけど、大きな流れとしては「脱大企業」が一段と加速していると思う。

大学生と話していると痛感するのだけれど、「新しいビジネス」に挑戦しようとした結果、若い企業を当然のように選ぶ人が増えている。就職活動の早期に内定をとると、そこで大企業の就活をしない人も多い。だったら、その会社でインターンをするのだ。

そういう選択をする学生は、決して変わり者ではなくて、多分大企業の基準でも「優秀」と言われるはずだ。

企業でトレーニングをしていても、まったく同じ感覚だ。いわゆる「伝統的な大企業」は「働く場としての価値」を問われていると思うし、20代の選択基準は今までとは全く違っている。

ひと頃は「成長できる環境」を気にしていたけど、最近は「いまここに参加したいか」という感覚で企業を選んでいるように思うのだ。

あと、最近気になるのは50代になって新たな挑戦をする人が増えていることだ。大企業では定年が延長されたりするけれど席が増えるわけでもなく、かと言って金融危機が一段落してからはリストラの理由もないまま、50代の不安は増している。

そして、彼らの中には大企業に執着しない人も多い。バブルの崩壊やその後の迷走を見て、会社に対して距離を置いている人が多い。

そして、この20代と50代の現象はどこかシンクロしているように思う。というのも、学生など20代と就職相談を受けている時に、「親はどう言ってる?」と訊くのだけど、ここ数年は親の発想が想像以上に「非大企業志向」で、スタートアップへの抵抗も少ないのだ。

つまり、脱大企業を志向している50代が、その息子・娘世代に影響を与えているように感じている。

もちろん「中堅」という都合のいい名前のもとに使われている30~40代の動きも激しいわけで、ことしも「人材のフルーツバスケット」状態は加速するんだろう。

※『ウォーフォータレント』が刊行されて、マッキンゼーの方が僕のいた会社に売り込みに来たのがもう17年前のことだった。事例などは古く見えるかもしれないが、問題の本質は変わっていないと思うし、やっと日本でも顕在化したのではないか。ちなみに、その時いらっしゃった方は先日とある企業のトップとなり、少々驚いた。