ザルツブルク・イースター音楽祭 in JAPAN オーケストラ・プログラム
シュターツカペレ・ドレスデン 演奏会
指揮:クリスティアン・ティーレマン
ピアノ:キット・アームストロング
2016年11月22日 19:00 サントリーホール 大ホール
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op. 19
(アンコール)J.S.バッハ :パルティータ第1番 変ロ長調 BWV825 メヌエットⅠ
R.シュトラウス:アルプス交響曲 op. 64
ドレスデンのオーケストラというと、昔は「いぶし銀」というイメージがあった。これは、東ドイツ時代にレコード会社あたりが作った、いかにもそれらしい惹句だったかもしれない。いまも来日するブロムシュテッとが振っていたと思う。
ホルンにはペーター・ダムという名手がいて、とても柔らかい音色だった。そういうこともあって、どちらかというと職人肌の渋いオーケストラというイメージがあったけれど、2007年に東京でマーラーの「復活」を聴いてイメージが変わった。美しく彫りの深い弦と、ピシッと決まる管楽器群。音色は明るくしなやかで、トップクラスのオーケストラだと感じた。
今夜はまず、ベートーヴェン。最初の音から、「ズゥン」という余韻がある。付点音符が減衰するときの心地よさが、独特だ。ピアノがは代役のキット・アームストロングだったが、軽やかながらも聞かせどころはしっかり弾く。
2番のコンチェルトは、ディスクで聞くとついつい聞き流してしまうのだけど、曲の構造もクッキリ見えて想像以上に楽しめた。
メインのアルペンは、「音を浴びて、響きにひたる」ような演奏だ。ホルンの太くて華やかな響きと、オーボエの冷涼で芯のある音が核となって、すべての管楽器が持ち味を最大に発揮したと思う。
後半になって特に感じたのは、これは単なる描写音楽ではなく、人の生命、あるいは生き方を語ろうとしているんだなということ。、「頑張ってアルプスに登って感動したけど、帰りは大変でした」というような話ではないんだよな、と改めて思う。
リヒャルト・シュトラウスの曲というと、このアルペンやツァラトゥストラ、あるいは英雄の生涯など、「響きは凄いが、空虚で精神性に欠ける」などという評論家の作文がずっとまかり通ってきた時代があった。
それも、まあ仕方なかったかなと思うのは、あまり演奏される機会がなく、たまにディスクが出ると「オーディオ・チェック」のための商品のように扱われてきた。
ようやく、一般的に演奏される機会も増えてくると、作曲家が実に深い思索をしていたのではないか?ということを考えるようになる。
そういう意味では、凄い技術でありながら、ジンワリと聴かせてくれる理想的なコンサートだった。