まず、今回の地震でいろいろと心配している人も多いと思います。講義などは予定通りにおこないますが、週末にメディアに接している間に落ち着かない気持ちになった人も多いでしょう。
皆さんは東京近辺で暮らしているわけですが、遠くの地で起こっていることをテレビなどで見るだけでも、心に対する影響はあります。そうした中で、「応援しよう!」と動き出す人もいれば、どうしていいかわからない人もいるでしょう。
でも、こういう時の反応は人によって違うのが当然です。「なにもできない」といって、ことさらに落ち込むことはありません。
青山学院でも応援募金を始めています。無理のない範囲で、参加するのもいいでしょう。
さて、こうした時に学生として大切なことがあります。それは、自分の学んでいることを活かせないか?と考えることです。
この講義はマーケティングやメディアを論じますが、それぞれにおいて、災害で貢献できることもあるのです。「どうすれば、もっとスムーズに助けられるのか?」という姿勢で学ぶことで、将来社会に役立つことができると思いませんか?
たとえば援助物資が現地まで行っているのに、必要な人に届ききっていないという問題があります。「必要なものを必要な人に」というのは、マーケティングの原点です。災害当初は、政府や自治体が救援にあたりますが、復興の過程では民間企業が大きな役割を果たします。
コンビニエンスストアは、過去の災害でもライフライン、まさに命綱になってきました。また供給するメーカーも、懸命に動いてます。
そして、メディアの発達が災害で果たした役割もたくさんあります。
メディア研究において、災害時にどのような情報が飛び交ったか?というのは重要な研究テーマの一つです。ただし残念なことに、こうしたパニック時には多くの誤った情報が流布されるということもあります。
一方で、メディアの発達がこうした災害において役立ったことも無数にあります。amazonの「欲しいものリスト」を公開にすることで、被災地のニーズを共有した例などは東日本大震災で知られるようになりました。
ボランティアの受け入れもままならない状況の中で、どうしたら役に立てるのか、日常の生活をおくってていいのか?思う人もいると思います。
こういう時に一番大切なのは、「本分をしっかりこなす」ということです。学生であれば、いまはまず学ぶことです。マーケティングやメディアを学ぶときにも、被災者の視点で考えていくことが、もっとも大切ではないでしょうか。
そうした積み重ねがあって、将来社会に貢献できるようになるはずです。なにも焦る必要はありません。
そして、ソーシャルメディアなどでの情報発信には細心の注意を払ってください。災害時には、多くの情報があふれますが、信頼性が検証できないものも多いのです。善意のシェアやコピペが混乱を増幅させることもあります。
技術の進化は、冷静な判断力があって、初めて社会の役に立つ。そうした原点に戻ることが、危機の時にこそ求められるのではないでしょうか。
【2016年4月19日青山学院大学経営学部マーケティング学科の講義より】