「喬太郎・彦いち・昇太」と「三三・白酒」を渋谷で。
(2016年4月3日)

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ここ何年か「渋谷に福来たる」という落語イベントがある。セルリアンの裏手にある大和田のホールを2つ使ってやるのだが、第一線の噺家が揃う。土日の間に、計8つの公演があって、今回は2度足を運んだ。

2日の夜は、柳家喬太郎、林屋彦いち、春風亭昇太の3人が一席ずつ。このイベントは、冒頭に出演者のトークがある。3人ともかつての「SWA」の仲間だけあって、こなれた感じで、その後に柳家小太郎の「のっぺらぼう」で幕開け。

喬太郎は「寝床」、休憩をはさんで彦いちは「遥かなるたぬきうどん」、昇太は「愛宕山」という流れ。この愛宕山は後半に昇太の創作による続きがあって、結構にぎやかになる。

3日の夜は、柳家三三と、桃月庵白酒の二人会。トークは10分足らずで、すぐに白酒の「風呂敷」から三三の「不孝者」と続く。休憩を挟んで、三三の「元犬」から白酒の「井戸の茶碗」でお開きとなった。

この二人会はとても楽しめたのだが、それぞれが達者なことに加えてバランスがよかったこともある。前半は男女の機微を描いた話だが、白酒が軽く入って、三三はしっとりと。

後半は三三が滑稽に犬を演じて、白酒がテンポよく噺をすすめる。

柳家と古今亭の芸風の対比も感じられるし、四席聞いてももたれないのがいい。

この夜に比べると、前日の3人はちょっと散漫になってたような感じだった。それぞれは達者なのだが、一人一席なのでいわば「メインディッシュ」をぶつけて来る。最初のトークもあり、喬太郎が始めた時には既に相当時間が経っている。昇太に至っては、枕を振る時間もなく、それを茶化しながら話して、終わったのは21時半を回っていた。

今回に限らないのだが、これは三人会の宿命のようなものかもしれない。ただ、このイベントのような、「落語家同士のおしゃべり」というのも、そろそろ曲がり角かなという気がする。

当たり前の話だが、落語は一人で演じる。何人かでおしゃべりすれば面白いかというと、決してそうとは限らないし、なにより公演時間が長くなる。寄席と違って、ホールで聞くときは2時間を大きく超えると、緊張感が薄まってしまう。

落語イベントというのも、「大銀座落語祭」あたりから注目されてそれなりの価値はあると思うんだけど、やや惰性になっているんじゃないかな。

一方で最近おもしろかったのは、amazonビデオで見た「新宿れふかだ落語会」という企画モノ。LEFKADAというライブハウスで行われた、若手中堅の高座が見られるのだが、なかなか楽しめる。

こうしたコンテンツが揃ってきて、若手が頑張ってくると「顔見世興行」的なイベントはどうなるのか。「渋谷に福来たる」もソニーミュージックがついているのだから、何か仕掛けを考えていると思うのだけれど。