今年最初の舞台は、3日の名古屋能楽堂から。「翁」から新年をスタートできるといのは、いかにもありがたい。初めて観たのだが、天下泰平・五穀豊穣を祈る舞は、どこか横綱の土俵入りを連想させる。
名古屋能楽堂はゆとりのあるつくりで、正面舞台の鏡板は「若松」。能舞台は普通「老松」なのだが、ここでは依頼を受けた杉本健吉氏が若松を描いた。当然のように物議を醸して、結果として老松の鏡板も作られて、1年おきに使用されるようになったそうだ。(ただいろいろいな方のブログを参照すると、今年は老松のようなのだが正確な運用はわからない)
この話を聞いた時には「なんと保守的な」と思ったのだが、実際に観てみるとどこか違和感がある。それは、この絵が天に向けたベクトルを持っていることが理由なのではないかな。老松の水平のベクトルが舞台に安定感をもたらすのとは対照的だ。
正月気分が残る7日は、新春浅草歌舞伎。近年は尾上松也を筆頭格に演じられている。
「三人吉三巴白浪」から「土佐絵」の舞、中入りを挟んで「与話情浮名横櫛」より源氏店の場。妻の友人が「宝塚の新人公演みたいなもの」と言っていたらしいが、よくわかる。あまり巧拙を語るのも野暮になるので、まあ正月の縁起物と思えば十二分に楽しい。毎年観ていれば、一人ひとりの成長ぶりが感じられるて、それも一興だろう。
冒頭の米吉の挨拶は、大学を「自主的に卒業した」と笑いをとってから「残念なことに、いま流行りの“卒論”を書けませんで」で爆笑。いつも思うのだが、歌舞伎役者の俗っぽさのセンスっていいんだよね。
13日は国際フォーラムで宝塚星組トップ北翔海莉とメンバーによるショー。前半はディズニーメドレーで、後半は宝塚のナンバーという構成。ミッキーマウスマーチの日本語版って久しぶりに聴いた気がする。
16日は国立能楽堂の定例公演。「岡大夫」では野村萬斎の達者な振る舞いが印象的で、「蟻通」では紀貫之がワキで醸し出す存在感が独特の世界を見せてくれた。
その後にはオーケストラ公演が続き、18日はムーティとシカゴ響による「運命」と「巨人」。22日はスクロヴァチェフスキと読響によるブルックナーの8番。これはどちらもブログに書いたが、新年早々音の波に浸ることができた。
ムーティは「東京・春・音楽祭」にも客演するし、秋にはウィーン国立歌劇場の来日公演でもフィガロを振るようだ。スクロヴァチェフスキは相当に高齢だが、まだ機会はあるかもしれないと思わせた。
今月最後の日は、31日の国立能楽堂特別公演。「鱗形」「舟船」から「唐船」へと至る構成は、海や船が主題になっているのだろうか。
唐船は四人の子方に相当の能力が求められることは、初めて観てもすぐにわかる。珍しい演目のようだが、この辺りについては後日に書いておきたい。