【旅の話】100ドルの極楽、奈良田温泉。
(2016年1月17日)

カテゴリ:遊んでみた
タグ:

身延からバスに乗って、1mn5 (2)時間半。奈良田温泉の宿は一軒だけである白根館。トイレと洗面は共用だが、最近はこういう宿に泊まることが多い。学生時代の合宿などはそんなものだったけれど、気がつくとトイレ洗面付の部屋が当然になってきた。

ただ、実際に泊まると大して不便ではない。食事は広間だが、こういう宿も多い。団体の宴会も減少したこともあるのだろうが、旅館としては部屋食よりも人手がかからないし、客としてもできたての料理をいただける。一方で、部屋食の旅館は小さい子どものいる家族などにはいいだろうし、そうした棲み分けも進むのだろう。

一泊二食でこのような価格というのは考えてみれば、相当ありがたい。というか温泉もついて100ドルでこれだけ楽しめるというのは先進国ではなかなかないだろう。海外の旅行者が日本の物価、とりわけ外食に割安感を感じるというのはよくわかる。

こうした小さな宿を予約するときに僕は電話で予約する。というかネットの予約サイトは使わない。宿を探して空室検索などは使うけれど、予約は電話だ。

というのも、こうした予約サイトは成約時にそれなりの販売手数料をとるわけだが、僕は自分の払ったお金はすべて宿に渡したいと思う。R社やR社に、おカネを払うくらいなら、少しでも宿に払いたい。現金だけの支払いというのも、納得している。小さな規模で良心的な価格設定をしているのだから、手数料負担を避けたいのはよくわかる。V社やM社に……(以下略)

料理は鹿肉のしゃぶしゃぶや、ニジマスの燻製などが印象的だ。地物できちんとした食事を出してくれるし、コメが存外においしかった。露天からは星がきれいで、メガネをかけないでもオリオン座があんなに見えるのは驚いた。mn5

翌日は、またバスに乗って下部温泉駅へ。「鰍沢」という落語があるのだが、同名の駅を通る。身延山にお参りに来た男が、雪中で道に迷い、ようやく見つけた一軒家に、辿りついて…という噺で、こうした山奥を舞台にして、しかもサスペンスというのは結構珍しい。

名人で聞くと、ピリピリとした緊張感が心地いい。

甲府に昼過ぎにつき、鳥モツ煮やらほうとうなど、わかりやすい観光客メニューを食べて、あずさで戻った。1時間半もかからずに、新宿に着く。

最近、国内を旅することが多い。すると、非日常的な体験は意外と身近なところにあるんじゃないかと感じる。遠くまで行ったけれど、「どこも同じだな」と思うことが結構あって、非日常の度合いと移動距離は比例しないんだろうな。

身延線は、日蓮宗総本山の久遠寺がある。日蓮はこの辺りを住処とし、後に寺を自ら開き、遺骨も奉ぜられている。そういえば奈良田温泉も、孝謙天皇が湯治に来たという伝説がある。平城京の時代であり、それが地名の由来のようだ。

この辺りの山あいには、昔から人を引き付ける何かがあったのだろうか。

在来線は特急と言っても、そんなに早いわけでなく、そのペースが気持ちいい。新幹線がどんどん延伸する中で、むしろ貴重で贅沢な体験になっている。東京近郊だと、このルートは手頃で面白いと思うよ。